Straesser R. (2008). Review of the proceedings of the 2001, 2003 and 2005 French summer schools in Didactics of Mathematics. Educational Studies in Mathematics. (printing).
この論文は,数日前に online first になったもので,まだ印刷中です.内容は,研究結果ではなく,フランスのサマースクールの概要を簡単に述べ,その研究の質を簡単に論じたものです.この中で,まさにそうだ,と同意できる言明が英語で(これが重要,仏語では色々あるため)あったので,備忘録として記しておくことにしました.二点あります.
一つ目は,「TIMSS や PISA のような大規模な国際比較研究は,数学教授学のフランスコミュニティーでは中心的な役割を果たさない」ということです.その理由は,フランスの数学教授学が理論枠組み,概念枠組み (conceptual, theoretical framework) を作ることを第一に考えているからです.換言すれば,数学教育に関する現象を説明するための言葉を作ることを第一にしているからです.フランス数学教授学をよく知っているひとには当然のことでしょう.
二つ目は,英語圏でしばしば用いられる 「“grounded theory” のアプローチは,フランス数学教授学コミュニティーには容易に受け入れられないであろう」ということです.これも一つ目と同じ理由からです.いくらある事象を詳細に描写したとしても,それはあくまで感覚にもとづいたものであり,新たな概念枠組みを作れば,その描写はまったく別物となってきます.すると,感覚にもとづいた詳細な描写はあまり価値を持ちません.さらに,その描写だけにもとづいて概念枠組みを作るというのも,フランスでは受け入れられないでしょう.なぜならその描写が頼りないものだからです.
以上,簡単ですが.