2015年3月31日火曜日

schema (シェマ、スキーマ)と scheme (シェーム、スキーム)

以前から思っていたのですが、 英語圏や日本での schema と scheme の使い方は結構不思議です。

英語圏や日本でピアジェの理論について議論する際、schema (シェマ)という語がしばしば用いられます。特に数学教育の現代化の頃でしょうか。今日でも、算数教育の辞典などにはシェマの語が見られます。ところが、フランスでピアジェの勉強をすると schema (シェマ)の語はほとんど出てきません。出てくるのは、 scheme (シェーム)です。フランス語で、schema と scheme は基本的には関係のない語です。前者は図式を意味する一般的な語で、後者はピアジェの理論などで出てくる人間の行為に関わる抽象的な心的な構造を意味する専門用語です。 scheme が英訳されて schema になったのでしょうか。
次のピアジェの仏語のウィキペディアをご覧ください。 基本的に scheme の語が用いられています。
http://fr.wikipedia.org/wiki/Jean_Piaget

いろいろ見てみると、スキーマとシェマが異なるという議論まであります。語学的には、schema を英語読みするか、フランス語読みするかの違いしかないように思いますが、わが国(英語圏も?)の認知心理学では意味が異なるようです。フランスでは、 Piaget の理論が英語圏で固有な解釈のされ方をしていると指摘されることがありますが、英語圏で発展した概念ということでしょうか。
仏語のウィキペディアにシェマのページがありました。解説にピアジェが出てこないところを見ると、英語圏から逆輸入されたものかもしれません。
http://fr.wikipedia.org/wiki/Sch%C3%A9ma_%28psychologie_cognitive%29

一方、最近の数学教育学の研究では、 schema の語が用いられることは少なく、 ほとんど死語のようです。scheme (英語読みではスキーム)はたまに用いられます。例えば、Harel らの証明の scheme というものがあります。 Instrumental genesis でも scheme が用いられています。後者は、フランスの認知心理学者 Rabardel が使っているものですから当然かもしれませんが・・・。

 ------ 追記 ------

この記事には Part 2 があります。 こちらもご覧下さい。
https://mathedmemo.blogspot.com/2019/12/schema-scheme-part-2.html


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