2017年6月3日土曜日

研究者の仕事:論文の査読

研究者の仕事の一つに論文の査読というものがあります.

研究論文というのは,多くの場合,書いてすぐに出版されるのではなく,学術雑誌の編集部に論文を投稿し,研究者コミュニティの仲間(peers ピア)による審査を通して論文として出版する価値があるかどうか判断されます.コミュニティに貢献できる論文が審査に通過し出版されるわけです.この論文を読み,出版の価値があるかどうか判断し,その報告書を書くことを査読(review レビュー)と言います.査読により論文の質も保証されるわけです.

この査読の仕事,結構大変です.まず,論文をしっかり理解し,出版する価値があるか判断します.その際,論文の内容についての個人的な好き嫌いではなく,あくまでも自らの研究者コミュニティに貢献できるかどうか,他の人がその論文を読んで何か得るものがあるかどうかを判断しなければなりません.さらに,その判断の理由をきちんと文章で説明しなければなりません.もし不十分と判断した場合はどうすれば論文が良くなるか的確なアドバイスが必要となります.この文章を書くのが結構大変なのです.いい加減なアドバイスだと,出版可となった場合,論文がさらに読みにくいものになってしまったりします.論文執筆者とともに一本の論文を書くというくらいの気持ちが必要となるのです.

研究者はこういった仕事をどのくらいやっているのでしょう.通常,一本の論文に二人もしくは三人の査読者が審査にあたります.研究者コミュニティの全員が論文を1本投稿するとすれば,コミュニティのメンバーの2,3倍の査読者が必要になるのです.すると,自らが投稿する論文の2,3倍の本数の論文を査読しないとコミュニティが成り立たないことになります.人によって論文の年間投稿数は違うかと思いますが,2本投稿すれば,4本から6本の論文を査読する必要があるのです.

私の場合は,年がら年中査読をしているような気がします(このブログもその現実逃避だったりします/笑).国内のものや海外のもの,長めのフルペーパーとやや短めの論文,全部一緒くたにして年間本数は大体15本くらいです(大学の実践研究は含めず).1ヶ月に1本以上ですね.年間5本くらい投稿しないと割に合わない・・・(笑).第一線の研究者になればもっと増えるのでしょう.

査読の仕事はお金にもならなく労力も大きいので断るか,と思うときもあるのですが,研究者コミュニティの発展のため,そして研究者としてのスキルアップのため,と今のところ頑張っています.以前,若手研究者向けの指南書(?)みたいなので,一流の研究者になるためにしなくていい仕事,した方がいい仕事についての解説がありました.それでは査読は絶対すべき仕事になってました.論文をより深く読み,自らの考えをまとめ表現する訓練になるし,最新の研究の情報を得られるからのようです.確かに,査読して本当に良かったと思うこともあるんですよね.その回数がもっと増えてくれると嬉しいのですが・・・.
 

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