2007年6月19日火曜日

Kilpatrick, J. (2003)

Kilpatrick, J. (2003). Twenty years of French didactique viewed from the United States. For the Learning of Mathematics, 23(2), 23-27.

以前に触れた Gascon の論文と同じ号にこんな論文がありました.フランス数学教授学の米国への影響について書いています.これは,フランス数学教授学誕生20周年記念会議で発表された 1994 年の仏語論文の英訳です.少し古い論文ですが,10年たって FLM に載っていました.10年経ってというところが面白いですね.つまり,10年経ってもあまり現状が変わっていないってことではないでしょうか.

この論文では,アメリカ人研究者がフランス数学教授学に触れた際の正直な反応が書かれています.やはり,理論的な面と,数学的なアイデアがたくさんあるところが大変なようです.予想通りです.また,didactics という言葉について英語(米語?)での印象などにも触れている点は,参考になりました.didactics という語が米国であまり用いられない理由がわかります.

特に面白かったのは,引用されているフランスの古い文献です.主に二つ目につきました.一つ目は,フランスの200年前の数学教育に関する文献,二つ目は,200年前くらいにフランス人から見たアメリカの研究(数学教育には限らない)についての文献です.前者では,フランスでの数学教育の歴史が長いことがわかります.一方,後者は,数学教育に限らないことですが,アメリカがプラクティカルな側面に強く,あまり理論的なものを発展させないということに触れています.これは,私も個人的に思っていたことで,200年前から認識されていたことなのだと,びっくりしました.ところで,このプラクティカルな面が強いのは,日本も同じですね.

ちなみに,Kilpatrick は,アメリカの研究者として有名ですが,フランスの数学教授学を非常によく知っている人のようです.フランス関係のものでもいろいろなところで出てきます.もう少し読もうかなって感じです.

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