2008年2月21日木曜日

Margolinas (2004)

Margolinas, C. (2004). Modeling the teacher's situation in the classroom. In H. Fujita, et al. (Eds.) Proceedings of the Ninth International Congress on Mathematics Education (pp. 171-173). Kluwer Academic Publishers.

この論文は, ICME9 の論文集にあるものです.2000年に日本で開催された ICME です.Regular lecture の論文ですが,3ページと非常に短いので,論文というよりは要旨のようなものです.そんな短い文章ですが,いくつか思ったところがありました.それをここに記録しておきましょう.

1. Devolution について
教授学的状況理論で鍵となる概念に devolution というものがあります.教師が生徒に問題に取り組むように責任を移す過程を指します.一般には,この devolution の語は,歴史などにおいて,王様が権力を司法や立法の機関に移すこと(つまり委譲)を指します.教授学的状況理論では,この意味をまねて,devolution の語を使っています.このため,この邦訳にも,「委譲」という語を使ってきました.なお,このお話しはなんとなく知っていたのですが,実際にこのことが書かれたものに出くわしたことがありませんでした.この論文が初めてです.そういう意味で,ここに記録しておこうと思ったわけです.

2. 制約のレベルと教師の知識のレベルについて
この 3 ページの論文では詳細が書けないので,論文が何の話をしているのかわからないと思います.ここでは,milieu の語が使われていませんが,教師の milieu を異なるレベル(局所的なものから大局的なもの)で捉えることが中心に書かれています.教師の実践を異なるレベルで捉えることは,教授学的状況理論だけでなく,人間学理論などでも近年よく見られます.私は,2001 年に初めて異なるレベルに関する講義を聴きました.そのときは,あまりよくわからなかったのですが,最近だいぶその必要性を感じてきました.特に,この論文を読み,再度,やはり教師の実践を分析するなら異なるレベルを考慮する必要がある,と思ったのでした.

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