2017年6月5日月曜日

スマートペン:データ収集用に

スマートペンなるものの存在を知った.

https://www.neosmartpen.com/jp/
http://pen.gakken.jp/

これは結構画期的かも.会議の議事録用ではなく,研究のデータ収集用に.

数学教育学の研究では,学習者の活動の様子をビデオ撮影したり,話し合いを録音したりして映像・音声データを収集することが頻繁にあります.最近のわれわれのグループの研究では,インターネットを使った探究活動の様子をデータとして収集する必要があり,パソコンの画面を録画して音声もとってくれるAG-デスクトップレコーダーというソフトが大変活躍しました.

さて,このスマートペンなるもの,普通のボールペンのように紙に書けて,書いたものが電子的に記録されるのです.これまでの数学の問題や課題をやってもらう調査であれば,学習者のワークシートを回収してPDFファイルに電子化していました.スマートペンでは電子化できるだけでなく,書いた順番も再生でき,活動をより詳細に捉えることができるのです.

さらに,録音機能もついています.二人一組でスマートペン一本で課題に取り組んでもらえば,筆記データのみならず話し合いの音声データも同時に得られます.映像データまでは必要のない場合はこれで十分でしょう.遠い昔,30人くらいのクラスでのペア活動をそれぞれテープレコーダーで記録したことがありました.これがあれば・・・.

さらにさらに,宿題や課題を自宅でスマートペンでやってもらうことも考えられます.研究者がその場にいなくてもデータ収集できるのです.これは楽チンです.

ただ,専用のノートを使わないといけないようですので,調査の際のワークシートは工夫しないといけません.あと,一本のお値段が結構します.40人クラスで二人一組の活動で全部で20本必要だとすると30万以上?研究費が必要です.

2017年6月3日土曜日

研究者の仕事:論文の査読

研究者の仕事の一つに論文の査読というものがあります.

研究論文というのは,多くの場合,書いてすぐに出版されるのではなく,学術雑誌の編集部に論文を投稿し,研究者コミュニティの仲間(peers ピア)による審査を通して論文として出版する価値があるかどうか判断されます.コミュニティに貢献できる論文が審査に通過し出版されるわけです.この論文を読み,出版の価値があるかどうか判断し,その報告書を書くことを査読(review レビュー)と言います.査読により論文の質も保証されるわけです.

この査読の仕事,結構大変です.まず,論文をしっかり理解し,出版する価値があるか判断します.その際,論文の内容についての個人的な好き嫌いではなく,あくまでも自らの研究者コミュニティに貢献できるかどうか,他の人がその論文を読んで何か得るものがあるかどうかを判断しなければなりません.さらに,その判断の理由をきちんと文章で説明しなければなりません.もし不十分と判断した場合はどうすれば論文が良くなるか的確なアドバイスが必要となります.この文章を書くのが結構大変なのです.いい加減なアドバイスだと,出版可となった場合,論文がさらに読みにくいものになってしまったりします.論文執筆者とともに一本の論文を書くというくらいの気持ちが必要となるのです.

研究者はこういった仕事をどのくらいやっているのでしょう.通常,一本の論文に二人もしくは三人の査読者が審査にあたります.研究者コミュニティの全員が論文を1本投稿するとすれば,コミュニティのメンバーの2,3倍の査読者が必要になるのです.すると,自らが投稿する論文の2,3倍の本数の論文を査読しないとコミュニティが成り立たないことになります.人によって論文の年間投稿数は違うかと思いますが,2本投稿すれば,4本から6本の論文を査読する必要があるのです.

私の場合は,年がら年中査読をしているような気がします(このブログもその現実逃避だったりします/笑).国内のものや海外のもの,長めのフルペーパーとやや短めの論文,全部一緒くたにして年間本数は大体15本くらいです(大学の実践研究は含めず).1ヶ月に1本以上ですね.年間5本くらい投稿しないと割に合わない・・・(笑).第一線の研究者になればもっと増えるのでしょう.

査読の仕事はお金にもならなく労力も大きいので断るか,と思うときもあるのですが,研究者コミュニティの発展のため,そして研究者としてのスキルアップのため,と今のところ頑張っています.以前,若手研究者向けの指南書(?)みたいなので,一流の研究者になるためにしなくていい仕事,した方がいい仕事についての解説がありました.それでは査読は絶対すべき仕事になってました.論文をより深く読み,自らの考えをまとめ表現する訓練になるし,最新の研究の情報を得られるからのようです.確かに,査読して本当に良かったと思うこともあるんですよね.その回数がもっと増えてくれると嬉しいのですが・・・.
 

2017年5月30日火曜日

フランス大使館で研究者ビザの申請

2017年5月末日に東京のフランス大使館に行って、研究者ビザと家族の同行ビザを申請して来ました。今年の夏から一年間フランス・リヨンに滞在するためです。このビザ申請、書類の作成や収集が結構面倒です。個人的な日記として、そして、もしかしたら今後にフランスで在外研究する人に役立つかもしれないので、ビザ申請に関する記録を残しておきたいと思います。ただ、必要書類等はよく変更になるようですので、ここの情報は古い可能性があります。正確な情報はフランス大使館のHPを参照ください。

大使館には予約時間の15分くらい前に到着。9時半に家族全員4人のビザ申請を予約していました。ビザ申請は渡仏の3ヶ月前から申請できます。われわれのフランス滞在は8月からで学生の留学などより若干早いためか、申請者はわれわれ以外に数組しかおらず、結構空いているように思いました。アメリカのときは長蛇の列だったことからすれば、ガラガラと言えるでしょう。その昔、同じくフランスのビザ申請をしたときはもう少し混んでいた記憶がありますが、それでも長蛇の列ということはありませんでした。

10分くらい待って、われわれの番が回って来ました。必要書類は以下の通りでした。

1.チェックリスト
大使館のHPからダウンロードしたものです。いつ変更になったのかわかりませんが(1週間ほど前だったらしい)、私のは古いもので少し違いました。

2.申請書
ダウンロードしたPDFファイルに acrobat で書き込み、サインしておきました。色々と不備があり、その場で加筆しました。主な不備は以下のもの。
・出生地は県名まで書く(私は県名しか書かなかった。家族は市名も)。
・家族ビザの申請書の方にも、受け入れ先(大学)の名称・住所・私の名前を書く。
・未成年の家族ビザの申請書は私がサインする。子供のパスポートのサインと異なった。

3.写真
近所のスーパーでスピード写真を800円で撮って行ったのですが、まったく同じ機械が申請のところにありました。600円也・・・。

4.パスポート

5.ビザ申請料金99ユーロ相当の日本円

6.Convention d'accueil
受け入れ先に作ってもらい、それにサインしておきます。履歴書と費用の証明書をメールで送ったら作ってくれました。先方の県庁に出すようで結構時間がかかります。確か1ヶ月以上かかりました。できあがったとき、最初、メールの添付ファイルだけで、「申請、頑張ってね」みたいなメールが来ました。原本が必要ない国もあるのですかね。私は原本を郵送してもらいました。あと、費用の証明書は学振に英語で作ってもらいました。

7.家族ビザ申請のための戸籍謄本と法定翻訳
研究者ビザの申請者本人は必要ありません。家族が必要です。家族全員で原本を一通ずつ(戸籍謄本と法定翻訳)とそれぞれにコピーを提出しました。法定翻訳はフランス大使館のリストの中から安いところにお願いしました。そしたら、なんと、学生の頃、フランス語の授業を取った先生がやっていた会社でした。
 戸籍謄本が曲者で、問題がありました。アポスティーユが必要と、変更になっていたのです。最初なんのこっちゃと思っていたのですが、外務省で戸籍謄本が正式のものだと証明してもらわないとダメになったようです。ビザ申請については後から戸籍謄本のみ郵送することになったのですが、ビザ申請後、霞が関の外務省に行く羽目になりました。アポスティーユも作成に1日かかるため、郵送してもらうことにしました。アポスティーユが必要になったので、遠方から東京に来てビザ申請する人は面倒ですね。ビザ申請の前日にアポスティーユを申請し、当日にそれを受け取ってから大使館に向かうことになるのでしょうか。アポスティーユを遠方から申請できるかは知りません。

8.移民局 (OFII) 提出用フォーム
この書類が必要とは知りませんでした。私のチェックリストが古かったからのようです。その場で記入しました。

9.封筒
レターパックの赤いやつを持って行きました。ビザ申請一つにつき一部必要とあったため、一人ずつの4部を用意していました。しかし、家族全員で一部で大丈夫でした。名前まで記入して持って行ったのに、と思いましたが、外務省のアポスティーユの申請で一つ使いました。

以上です。色々とありましたが、どこも基本的に混んでなかったので比較的スムーズに行った感じでした。

2017年5月4日木曜日

ブログの引っ越し

ブログを引っ越ししました.
ウェブリログの「数学などに関する備忘録」は近いうちに閉鎖予定です.
タイトルや管理人の名前が若干変更になりました(笑).

更新頻度は非常に低いですが,数学教育学の研究や海外の数学教育に関する情報など,面白そうな話題があれば今後とも発信していきたいと思います.
宜しくお願いします.

ところで,今回の引っ越しにあたり,Biglobe の MovableType 形式のバックアップファイルから Blogger のXMLファイルへ変換しました.少し手こずりましたが,一応できました.やや文字化けしていたり,リンクが切れていたりします.変換には「syasudaのツール」にお世話になりました.有難うございました.

2016年11月12日土曜日

÷ の記号 (割り算記号?)

この記号の意味は何でしょう?英語では obelus と呼ばれます.日本人にはあまりにも当たり前で問いにもならないかもしれません.

もう10年以上前になりますが,2004年にノルウェーのベルゲンという町でPMEという数学教育学の国際会議がありました.それに参加した際のお話です.ベルゲンの街を散策していると,ある洋服屋さんでバーゲンらしきものをやっており,そこには,でかでかと「÷30%」と書かれていました(写真を撮るべきだった).そのときの私の反応は,おそらく皆さんと同様と思われますが,「値段が高くなってしまうやんけ!(笑)」でした.0.3 で割れば,元の値段の3倍ちょいになってしまいます.一緒にいたスイス人とマレー系アメリカ人も同様の反応で,一緒に笑っていました.

ところが,数年後,あるデンマーク人と話していたとき,ふとしたことから,その意味を知りました.そう,実は北欧では,「÷」をマイナスの意味で使うというのです.ノルウェーで見た「÷」の記号はマイナスを意味し,「÷30%」は「30%引き」を意味していたのです.ビックリです.ノルウェー人の算数レベルが低かったわけではなく,単に,笑っていた者が無知だったのです(笑).

調べてみると,カジョリの文献に詳細に書かれていました (Cajori, 1928/1993). カジョリによると,ヨーロッパでは,16世紀頃は「-」をマイナスや引き算に使っていたそうですが,その頃から「÷」にとって代わるようになり,19世紀頃まで(北欧では20世紀になっても)「÷」をマイナスや引き算に使うことが見られたとのことです (idem., pp. 240-243).したがって,「÷」がマイナスや引き算の意味で使われていた時代があり,ノルウェーでの利用はその名残だったのです.

ちなみに,ドイツやフランスの大陸ヨーロッパでは,割り算の記号は「÷」ではなく,「:」を使うことが多いです.「÷」を割り算に用いる記法は,あるスイス人の17世紀の文献で見られ,その記法は大陸ヨーロッパやラテンアメリカでは定着しなかったものの,その翻訳がイギリスで発行されたため,イギリスで広まりさらにアメリカにも広まったとのことです (idem., pp. 270-271).それが日本にも明治以降に入ってきたのでしょう.

なお,日本語のウィキペディアの除算記号のページは,英語から部分的に訳したためか,記述がずいぶん間違っています(しかも2007年から!).北欧で除算記号として使われたのではなく,北欧では最近までマイナスや引き算の意味で使われていると,英語版では書かれています.さらに,ラーンやペルは考案者ではなく割り算の意味で使い始めた最初の人々です.さらにさらに,この記号が分数表記を変形したものというのも怪しいですね.英仏のウィキペディアによれば,obelus は短剣符や細い棒などを意味するギリシャ語を語源とするようです.いずれにしても,ご注意ください(誰か修正してください).

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%99%A4%E7%AE%97%E8%A8%98%E5%8F%B7
https://en.wikipedia.org/wiki/Obelus

Cajori, F. (1928/1993), A history of mathematical notations (two volumes bound as one), Dover.

2016年8月14日日曜日

国際学会による数学教育学の研究者育成

最近,国際的な学会による数学教育学の研究者育成・養成が盛んになってきたように思います.まだまだ新しい研究領域である数学教育学が今後も発展していくためには大変大事なことですね.そこで以下では,いくつかの国際的な学会による研究者育成の取り組みを紹介したいと思います.

2016年にドイツ・ハンブルグで開催されたICME-13 (http://icme13.org/) では,Early Career Researcher Day なるものが,24日のICMEの本会議の開始前に開催されました.このような取り組みは前回のICMEではなかったように思います(間違っていたら教えてください).これは数学教育学の研究経験の少ない人を対象とした研究者育成プログラムです.その内容を見ると,本会議以上に興味深いものがたくさんあります (http://icme13.org/early_career_researcher_day/program).いろいろある専門領域に分かれており,それぞれにおいてその専門領域がどのような研究なのか,第一線の研究者が講義をするようです.私も聞いてみたかったです.もしかしたら演習なども含まれるところもあるかもしれません.

こうした研究者育成プログラムは他の国際学会でも進められています.PME (http://www.igpme.org/) の年会では少し前から Early Researchers’ Day なるものが,本会議とは別に開催されています.いつから開催されているかは知りませんが,昨年のオーストラリア・ホバートで開催されたPME39 (http://www.pme39.com/), 今年のハンガリー・セゲドで開催されたPME40 (http://pme40.hu/) では開催され,さらに今年の総会では,この研究者育成プログラムを年会の正式なプログラムに位置付けることが決定されました.

学会による研究者育成の動きはヨーロッパではもう少し早くからありました.1998年に設立された ERME と呼ばれるヨーロッパ数学教育学会 (http://www.mathematik.uni-dortmund.de/~erme/) というものがあります.この学会には YERME という若手の会があります.この会は若手の有志の単なる集まりではなく,その代表2名が理事のようなものにも入り ERME の運営にも関わるというERMEの正式な組織です.若手の意見を学会に反映できる仕組みを取り入れているのです(この仕組みはフランスのARDMという学会も同様です.一方,わが国では・・・).そして,ERME による2年に一度の国際会議 CERME では,今年のICMEやPMEのように,本会議の前にYERME day という若手対象のプログラムが用意され,さらに,2年に一度,YESS (YERME Summer School) と呼ばれる若手研究者向けのサマースクール(夏期講習会)が開催されています.2016年8月はチェコで開催のようです (http://ocs.pedf.cuni.cz/index.php/YESS/YESS8).

これらの国際学会による研究者育成プログラムでは,第一線の研究者による講義と演習・ワークショップからなることが多いようです.演習やワークショップはグループでデータを分析しディスカッションするというのがよくある形式だと思います.教科書やプロトコルなどのデータを何かしらの理論を使ってみんなで分析し議論することにより,実際に研究を進める上で必要となる実技能力の獲得を目指すわけです.日本ではあまり馴染みがないかもしれませんが,ヨーロッパに限らず,学会による研究者育成プログラムに限らず,国際的にはよく見られるもののように思います.

また,こうしたプログラムの目的は,研究者としての技能を習得すること以外に,研究者のネットワークを作るということにもあります.ワークショップでのディスカッションや食事会など,知り合いを作れるような機会が用意されています.同じような境遇の研究者と知り合い仲良くなって(他の研究者は敵ではありません),いろいろな問題を共有するとともに,将来の共同研究へもつながれば,と考えるわけです.最近のEUでのヨーロピアンプロジェクトなど,数学教育学研究は国際共同研究が基本になってきました.その素地を作っているのでしょう.さらに,数学教育学研究の問題意識や方法論などの共有化をももたらすという目的もあるかもしれません.実際,数学教育学の研究は国によって非常に大きく異なることがこれまでしばしば指摘されてきました.そして近年,理論のネットワーク化など,種々の研究の相互理解を促す試みが多く進められています.こうしたプログラムに参加することにより,早くからいろいろな問題意識や方法論を共有化する機会となるのでしょう.脱線しますが,確かに,フランスの場合などは,数学教育学研究が発生してきた初期から,この共有化のために,若手に限らず,数学教育学の研究者を対象にサマースクールを開催してきました(1980年から),そのため,問題意識や理論,方法論は驚くほどに共有されています.

以上,長くなりましたが,こうした研究者育成が海外では着々と進められているわけです.日本も頑張りたいところですね.とりあえず,わが国の博士課程の院生の方,博士を取って間もない方,年齢にかかわらず数学教育学研究の経験の少ない方(学校現場が長かった大学教員の方,数学の専門から数学教育学に関心をもった方,などなど)などにこうしたプログラムに大いに参加して欲しいところです.英語のブラッシュアップにもなります.ちなみに,ICMEやPMEでは,Young researcher ではなく,Early Career Researcher, Early Researchers の語が用いられています.これは,数学教育学の分野は教員等をやってから博士課程に進み研究者になる方が少なくなく,研究者のキャリアは少なくても年を取っていることがしばしばあるからです.

2015年3月31日火曜日

schema (シェマ、スキーマ)と scheme (シェーム、スキーム)

以前から思っていたのですが、 英語圏や日本での schema と scheme の使い方は結構不思議です。

英語圏や日本でピアジェの理論について議論する際、schema (シェマ)という語がしばしば用いられます。特に数学教育の現代化の頃でしょうか。今日でも、算数教育の辞典などにはシェマの語が見られます。ところが、フランスでピアジェの勉強をすると schema (シェマ)の語はほとんど出てきません。出てくるのは、 scheme (シェーム)です。フランス語で、schema と scheme は基本的には関係のない語です。前者は図式を意味する一般的な語で、後者はピアジェの理論などで出てくる人間の行為に関わる抽象的な心的な構造を意味する専門用語です。 scheme が英訳されて schema になったのでしょうか。
次のピアジェの仏語のウィキペディアをご覧ください。 基本的に scheme の語が用いられています。
http://fr.wikipedia.org/wiki/Jean_Piaget

いろいろ見てみると、スキーマとシェマが異なるという議論まであります。語学的には、schema を英語読みするか、フランス語読みするかの違いしかないように思いますが、わが国(英語圏も?)の認知心理学では意味が異なるようです。フランスでは、 Piaget の理論が英語圏で固有な解釈のされ方をしていると指摘されることがありますが、英語圏で発展した概念ということでしょうか。
仏語のウィキペディアにシェマのページがありました。解説にピアジェが出てこないところを見ると、英語圏から逆輸入されたものかもしれません。
http://fr.wikipedia.org/wiki/Sch%C3%A9ma_%28psychologie_cognitive%29

一方、最近の数学教育学の研究では、 schema の語が用いられることは少なく、 ほとんど死語のようです。scheme (英語読みではスキーム)はたまに用いられます。例えば、Harel らの証明の scheme というものがあります。 Instrumental genesis でも scheme が用いられています。後者は、フランスの認知心理学者 Rabardel が使っているものですから当然かもしれませんが・・・。

2014年6月4日水曜日

めずらしいかけ算

学生がちょっとかわった掛け算の方法を見つけてきた.
結構,面白いので紹介します.下にあげた書籍に出ているそうです.

以下の手順で進めます.下のは 37 x 43 の場合.
1.A を 2 で割って商を下に書いていく.余りはいらない.
2.B を2倍して積を下に書いていく.
3.A が 1 になるまでこれらを繰り返す.
4.A が偶数のところを線を引いて消す
5.残ったBを一番上から全部足すと答えがでる.

A    B
37 × 43
18    86
9    172
4    344
2    688

1    1376
----------
    1591

もちろん,こんな面倒な方法を使って計算する必要はありません.
ポイントはなぜこれで求められるかです.
ヒント:二進法展開.3で割って,3倍する場合は?

大須賀康宏 編著 (1982). 『楽しく学べる算数ゲーム・パズル』,東洋館出版社.

2014年6月2日月曜日

コーヒーとミルク,どっちが多い?

久々の更新です.

PRIMAS (http://www.primas-project.eu/) という数学・理科の教師教育関係のヨーロピアンプロジェクトがあって,その成果物に色々な教材,実践事例が出ていました.その中で面白いなと思ったものがあったので紹介します.日本では中1の文字式あたりの問題になります.

コーヒーとミルクが同じ大きさのグラスに同じ量だけ入っています.

スプーン(お玉でもいいです)でコーヒーのグラスからミルクのグラスへコーヒーをある量だけ移し,混ぜます.
そして,今度は同じスプーンで混ざったミルクのグラスからコーヒーのグラスへ同じ量だけ移し,混ぜます.

さて,ミルクのグラスに入ったコーヒーの量とコーヒーのグラスに入ったミルクの量,どちらが多いでしょうか?


この問題は,子どもたちが協働して探究することを想定したものです.答えがなぜそうなるのかを考える過程で,色々なモデル化の方法が出てきて,算術から代数への移行を促すことを意図したもののようです.やってみてください.

日本でもこのような問題はあるのですかね?ちなみに,今回のは誰のかなと思っていたら,なんと,以前グルノーブルにいて,現在ジュネーブ大学の Jean-Luc Dorier が書いたものでした.確かに,代数学習の関係の研究を結構やっていました.
http://www.primas-project.eu/artikel/en/1066/The+wine+water+situation/view.do?lang=en

2012年7月26日木曜日

1冊でわかる 数学

ティモシー・ガウアーズ (2004). 『1冊でわかる 数学』(青木薫訳),岩波書店.

フィールズ賞を受賞した数学者による著書です.タイトルからして数学の軽い啓蒙書のように思えますが,内容は結構興味深いものです.というのも,数学そして数学的な活動がいかなるものか,ウィトゲンシュタイン的な立場から,様々な具体例を交えて示しています.私は論理実証主義とかウィトゲンシュタインとかをあまりよく知らないのですが,本書では,「数学的対象は,それが何を為すかによって規定される」という立場を基本に,色々な事例が紹介され,そうした立場にある程度納得がいくようになっています.

前回紹介したイタリア人の本もそうでしたが,ちょっとした興味・関心を引くための啓蒙書というよりも,数学の本性を問う数理哲学チックな本です.本書の最後の方では,数学教育についても少し語っており,そこは???なところもありますが,目を通してみる価値はある本だと思いました.

2012年6月4日月曜日

数はどこから来たのか:数学の対象の本性に関する仮説

Giusti, E. (1999). 『数はどこから来たのか:数学の対象の本性に関する仮説』(斎藤憲訳),共立出版.

イタリア語の翻訳本ですが,非常に読みやすいとともに,その内容が大変よかったです.数学史の本というよりも,数学の本性や発生に焦点を当てた,科学哲学,数学のエピステモロジーの本という感じです.

本書では,数学的対象が創り上げられる過程において,「探求の道具」「問題への解答」「研究の対象」といった段階が存在することが,数や幾何,群などを事例に非常にわかりやすく述べられています.こうしたことは,数学教授学研究では80年頃から数学的な知識の性格として結構考慮に入れられているものです.例えば, Douady の Tool/object の理論は,まさに「探求の道具」と「研究の対象」の側面を考慮に入れたものですし,Brousseau の教授学的状況理論でも,situation of action では,「探求の道具」として新たな数学的な知識が発生し,その後の situations ではそれが検討の対象になります.しかし,こうしたことを数学史や科学哲学等の文献,特に和書では読んだことがありませんでした(おそらくあるのだと思いますが).そういった意味で非常にお薦めです.教授学的状況理論等を理解するためにも助けになると思います.

2011年7月13日水曜日

ERIH: 人文社会科学系ジャーナル index

約2年ぶりの更新です.

ERIH という ESF (European Science Foundation) が作成している人文社会科学系ジャーナル index があります.それが最近更新されました.これを見ると,ヨーロッパの研究者から見た国際誌の評価がなんとなくわかります.数学教育学の国際誌については,すべてが入っているわけではありませんが,有名どころは結構 INT1, INT2 に入っています.今回の index で INT1 とランク付けされた純粋に数学教育学研究の国際誌は,ESM, RDM, JRME, Mathematical thinking and learning, Relime でした.こうしたランク付けは,ちょっと微妙ですので,あくまで参考程度に.

http://www.esf.org/research-areas/humanities/erih-european-reference-index-for-the-humanities/erih-foreword.html

2009年6月3日水曜日

書籍の電子化

ちょっと前、 google などによる書籍の電子化について著作権の問題等が話題になっていました。しかし電子化のおかげでこの世の中はすんごく便利になりました。特に古い洋書なんて読もうと思ったら、見つけるのが非常に大変です。日本にあればまだいいですけど、なければその国までいかないといけません。

今日発見して大変嬉しかったサイトは次のフランス国立図書館の電子図書館です (http://gallica.bnf.fr/)。これはすごいです。18世紀、19世紀の数学の本などが pdf でダウンロードできるのです。やるな、フランス、と思いました。数学以外も色々なジャンルの古い書籍が電子化されているようです。ちなみに今日ダウンロードしたのは、19世紀の数学の教科書とルジャンドルの幾何学の教科書。

ちなみにオイラーのものはほとんどすべてが以下のサイトで入手できます。
http://math.dartmouth.edu/~euler/