2007年11月8日木曜日

Sriraman, B. and Kaiser, G. (2006)

Sriraman, B. and Kaiser, G. (2006). Theory usage and theoretical trends in Europe: A survey and preliminary analysis of CERME4 research reports. ZDM, Vol. 38, No. 1, 22-51.

typo の多い論文です(笑).ヨーロッパでの理論枠組みの流行を CERME4 の論文をもとに分析したものです.主な系統としては,UK のアングロサクソン系の理論枠組みおよび研究,フランス系,ドイツ系,イタリア系をあげています,その中でも,フランス系は特殊で話す言葉が違うことに触れています.他国系が経験的な手法に基づいた心理学的な言葉が多いのに対し,フランス系が「社会文化的理論」に基づいた言葉を使うとのことです.この「社会文化的理論」というのは,あまり正しくないですが,全体的な理論枠組み(おそらくパラダイム)が違うので,言葉が違うことは確かだと思います.

また,ある研究領域では,より均一の理論枠組みが用いられ,ある研究領域では非常に不均一であると言っています.おそらく研究として根底にある問題意識と研究対象の違いが大きいのだと思います.実際,研究領域にしても,より均一の理論枠組みが用いられている領域は,情意や Embodies cognition などフランス系ではあまり研究対象にならないもしくはなっていないものだったしています.

数学教育研究がより科学的な研究領域としてアイデンティティーを得るために,異なる理論枠組みを明確にすることを,これまで ICMI Study などでも取り組んできましたが,やはり難しいですね.一番の困難性は,その問題意識と何をもって「科学的」とするかの部分だと思います.明らかにアメリカ系の「科学的」とフランス系の「科学的」は異なります.この困難性の克服のためには,理論の違いを自らのパラダイムに基づいて理解し,認め合うのだけでなく,その根底のところを相互理解できるようにすることが必要なのでしょう.

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