2007年3月15日木曜日

Ball (1993)

Ball, D. L. (1993). With an eye on the mathematical horizon: Dilemmas of teaching elementary school mathematics. The Elementary School Journal, 93 (4). pp. 373-397.

Ball (1993) では,教授におけるいくつかのジレンマが示された.いくつか引っかかるところもあったけど,論文自体はなかなか面白かった.

引っかかった点に関して:

数学そのものの性質では,負の数の扱いのところで,演算としてのマイナスと数としてのマイナスを明確に分けていなかった.ビルディングの表現では,数としてのマイナスは,位置としての階の番号と,上への方向を持つ量としての移動分を,マイナスを用いてうまく表現できる.しかし,演算としてのマイナス(つまり引き算)はちょっと難しい.もしかすると,移動分の量のみの演算として演算のマイナスも出現させることはできるかもしれないが(要検討).

もう一点引っかかったのは,ショーンの偶数個のペアのところで,スタンダードな数学では意味をなさないようなことが書かれていたけど,4 の倍数ということを考えれば,数学的にも意味はある.2 (2k) もしくは a = b (mod 4) がどんな数か探究すればそれなりに面白いであろう.もちろんその方向に授業を持って行くかどうかは別で,教師の展望から外れてしまう可能性があるという意味で,ジレンマではあるかもしれない.

Representation (表現)に関して:

表現のジレンマに関しては,Duval (1995, 2006) の register を考えれば,現在からすれば,当然ではある.もちろん米国では今でもあまり知られていないのだろうけど.register の視点からすれば,このジレンマは数学を教えようとするときの用いられる表現に固有なジレンマである.Duval が言うように,ある数学知識を獲得するためには最低2つの register が必要となってくる.しかしそれぞれの register においては,与えることのできる情報や可能な操作が異なり,それぞれは対応する数学概念の側面が異なるのである.

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