2007年3月29日木曜日

Jacobs & Morita (2002)

Jacobs, J. K., & Morita, E. (2002). Japanese and American teachers' evaluation of videotaped mathematics lessons. Journal for Research in Mathematics Education, 33, 154-175

非常に読みやすくスピーディに読めました.アメリカの教師と日本の教師の考える理想的な授業に対する考えを分析したものです.それぞれが非常に異なる考えを持っていることがわかり,なかなか面白いです.

研究の方法は,それぞれの国で撮ったビデオをそれぞれの国の複数の教師に見て批評してもらうというものです.データの分析自体は,scripts や米国人の好きな grounded theory などが用いられており,数学知識との関係で構築された理論は用いられていません.まあこれが数学教授学と異なる点ですが,アメリカなのでしようがないでしょう.

実験の結果で,日本の教師による米国の授業の理想的な側面が得られなかったというのは,そうだろうと思います.もちろんどのような授業が理想的であるかは,時代によっても異なり,学習そのものの理解の仕方によっても異なり,明示するのは難しいですが,少なくとも現在の日本人にとっては現在の米国の授業は理想からほど遠いのは確かだと思います.私も米国に来ていくつか授業を見ましたが,個人的な善し悪しの観点からすれば,どれもひどいなぁ,というのが感想です.授業が複雑かつ曖昧で,何をしたいのかよくわからないものが多かったです.子どもたちより数学を知っている見学者がわからないのだから,子どもがわかるわけありません.

とまあ授業に対する個人的な批判はおいておいて,論文自体は,数学教授学の範疇に入るものではありませんが,米国の数学教育研究においてよく見られるタイプのものです.数学教授学では,研究をより科学的にするために,数学そのものをより深く分析します.一方,米国では,研究をより科学的にするため大量のデータと統計的手法を用いることが多いようです(最近?).そのためか,数学そのものの分析は少なくなり,他分野(認知心理学等)の研究者でも研究できそうな印象がしてしまいます.

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