2007年3月15日木曜日

Simon (1995)

Simon, M. A. (1995). Reconstructing mathematics pedagogy from a constructivist perspective. Journal for Reserch in Mathematics Education, 26 (2), 114-145.
Steffe, L., & D'Ambrosio, B. (1995). Toward a working. model of constructivist teaching: a reaction to Simon. Journal for Reserch in Mathematics Education, 26 (2), 146-159.
Simon, M.A. (1995b). Elaborating models of mathematics teaching: A response to Steffe and D'Ambrosio. Journal of Research in Mathematics Education, 26 (2), 160-162.


読み始めて,特に最初の方にいくつか共感する部分があり面白そうだと思った.まあ最後の方の hypothetical learning trajectory などの教授モデルはおいておいて,それなりに面白い論文だった.

共感した部分は次の2点:
第一に,構成主義が単に学習(教授ではない)がいかになされるかという見解 (tenet) でしかないととらえていること.それはまったくその通りだと思う.いつからかどこから構成主義が変に解釈されて,教授法の一つみたいに考えられてきた.おそらくアメリカもしくは英語圏で多かったのだと思う.フランスではそんなことは全くなかった.原文を読み,当該者と議論できる環境だとそういうことは起きないんじゃないかな.実際,誰もピアジェを教育学者だとは思ってない.

第二に,フランスの数学教授学研究をある程度把握していること.これはちょっと個人的な好みになるが,やはり理論面は進んでいるので,いいことです.

いくつか思ったこと:

シェーム (scheme) に関して
長方形のテーブルを長方形の単位で面積を測る問題 (Turned Rectangle Problem) で学生がなかなか理解できなかったことが取り上げられている.この点に関しては,Steffe & D'Ambroisio (1995) が利用されるシェームが違うから当然だのようなコメントをしている.そして Simon (1995b) でそれはその通りだのようなコメントを返している.

「シェーム」の語は,このような場合に,人間が用いている知識の側面やその区画化を説明できて確かに便利.しかし,そこで僕が思ったのは,それ以上の説明はできるものではないということだ.シェームを考えれば,Steffe & D'Ambroisio (1995) の言うように,別のシェームが利用されるように既得知識を活性化すればよいということになる.確かにその通りではある.しかし,それぞれはいかに特徴づけられ,いかに区分されるのであろうか.曖昧である.シェームという概念そのものが曖昧なのである.そのため,フランス数学教授学では,Vergnaud (1991) らによって concept, conception などが数学そのものの性質を考慮して導入された.特に重要なのは表現・表記法,特に register だと思う.上の例も register もしくはコンセプションの概念を使えばもっとうまく説明できる.

構成主義的教授
Simon の行った授業はおそらく「構成主義的教授」の一つであるのだと思う.しかし,構成主義の根本原理の一つである,環境 (milieu) からのフィードバックについてはほとんど分析がなかった.なぜだろう?同化や調節については触れられていたが,どれも教師からのフィードバックに関してだったように思える.物足りなく感じた.

教授モデル
Simon は自分の授業から構成主義に基づいた教授モデルを構築している.そこで素朴な疑問は,本当にこのモデルが構成主義に基づいた教授モデルの必要十分条件になっているのだろうか,である.reflection を促すことが構成主義に基づいていることの一つとしてあげられているが,このことはこの教授モデルといかに結びついてるのかあまり明確でない.さらに,環境からのフィードバックも考慮されていない.すると,この教授モデルは,構成主義の根本原理を満たしていない学習を促す教授でも構成主義に基づいていると言い張ることができそうな感じがする.Simon が冒頭で危惧していたこと (構成主義的な教授と言い張っているものが多い) を再現しないか心配である.

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