2007年5月4日金曜日

Chevallard, Y. (1999).

Chevallard, Y. (1999). Didactique? Is it a plaisanterie? You must be joking! A critical comment on terminology. Instructional Science, 27(1/2), 5-7.

数ヶ月前に一度読んでいたのに,また発見しました(忘れていた).これは論文というよりも3ページのちょっとしたコメントです.でも意外と面白い,かつ重要な裏話的なものです.

専門用語についてですが,それも「フランス数学教授学」そのものの英語表記についてです.この頃 (1999年頃) まで英語で表記する際に didactique の語を英語の didactics に訳さずそのまま使っていることがよくありました.例えば,Brousseau (1997) の『教授学的状況理論』の英語版では didactique を使っています.これは,フランス数学教授学が,通常の訳の「教授」やドイツの「教授学」のような意味で取られると嫌だからということに起因します.確かにフランスのものは,その問題意識や手法からして通常の mathematics education 研究とは異なるのでその気持ちはわからないでもありません.

この論文でシュバラールが言っている論拠もまあその通りかなって感じがします.つまり,他の言語との兼ね合いもあるし,そもそも他の分野(economy や geography など)でも科学的な学問分野と実際的な側面と両方を意味することを考えれば didactics の英訳でよいとするものです.

ちなみに,ブルソーも最近は didactics を使っています.確か PME30 のプレナリー論文だったと思いますが,言語学等の他の分野を見習って didactics を使うと言っていました.

シュバラールのこの論文では,もうひとつ専門用語の訳に触れています.そう彼の理論である「教授学的置換」の英訳です.こっちは,意味が変わってしまうといけないから,transfer (移動や変換など)ではなく transposition (置換)なんだとさ.

追記(2007/06/23):上のブルソーのことに関してですが,プレナリーの論文ではなく,発表の資料でした.Warfield のサイトから入手できます. http://www.math.washington.edu/~warfield/Didactique.html

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