2007年5月9日水曜日

Rav, Y. (1999)

Rav, Y. (1999). Why Do We Prove Theorems? Philosophia Mathematica, (3) Vol. 7, 5-41.

この論文は,数学哲学のものですが,なかなか面白かったです.数学における証明が,コンピュータのプログラムのような無味乾燥なものでなく,非常に人間的なものであることを示しています.定理を証明する過程においていかに数学知識が発展するかいくつかの例で示しているところなども,ラカトシュの『証明と論駁』みたいでなかなか面白かったです.

この論文の中で特にポイントになるのは(私にとって),形式的な証明である Derivations と一般に数学者などが与える Conceptual proofs の区分だと思います.それぞれに対応するように,数学基礎論のような演繹的に「整合性 (consistency)」のあるフォーマルな理論と,数学基礎論以外の多くの分野のような意味などにおいて「一貫性 (coherence)」のあるインフォーマルな理論に区分できるというのは,確かにと思いました.摩天楼の基盤と宇宙船の作成のメタファーもわかりやすかったです.

このことを数学教育の研究に照らして考えてみると,フランス語では,prove と demonstration という二つの語があり (e.g., Balacheff, 1987),上の区分に一応対応する感じがします.それぞれの違いは, Duval (1991) などによりまたちょっと違った視点から示されています.そこでちょっとした疑問は,これらは本当に対応するものなのだろうか?ということです.実際,対応するのであれば,なぜ Rav はフランスの人なのに demonstration の語を用いなかったのだろう?学校教育における demonstration の利用が数学者社会の proof と同じように思えたからだろうか?それとももっと機械的に導かれているニュアンスを出したかったのだろうか?

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