2007年5月15日火曜日

Laborde, C. (2007)

Laborde, C. (2007). Towards theoretical foundations of mathematics education. ZDM, 39 (1-2), 137-144.

前回の記事の追記に少し書いたように,ZDM で "Didactics of mathematics as a scientific discipline - in memoriam Hans-Georg Steiner" という特集を組んでいました.その中の論文で,フランスの Laborde のものがなかなか面白かったので簡単に紹介します.

この論文では,フランス数学教授学のこれまでの変遷を理論に焦点を当てて紹介しています.極力,ドイツの数学教授学と関連づけているところがなかなか面白いです.フランスとドイツの両数学教授学は,たま~に共同の会議を開いて交流を図っていたようです.今回の特集には,フランス数学教授学の研究者は,Laborde しかいませんが,Straesser の論文を見るとフランスに影響を受けているのがよくわかります.

論文自体の内容は,コアとなる数学知識の研究が不変(普遍?)のものとして常に中心にある一方で,研究の焦点が少し変わってきたことを紹介しています.それは,ミクロレベルの研究とマクロレベルの研究の関係がだいぶ確立されてきたという点と,授業設計よりも通常の授業が分析対象になってきたという点が上げられています.前者は,教授学的状況理論と教授学的置換理論がだいぶ補完しながら分析ができるようになったことにあります.後者は,私の知っている2000年頃からそうでしたし,フランス数学教授学の理論は授業を理解するための道具なので,その利用方法は当然かもしれません.でも,さらに根本的な,数学教育の現象のメカニズムに研究の対象がいっているのかもしれません.

その他,数学教育の ICT 利用にも触れています.もちろん研究レベルの話しですが,近年よく用いられる分析枠組みで artefact, instrument などにも触れています.ヴィゴツキーを発展させた Rabardel の枠組みは,tool の利用には非常に便利なものですが,日本ではまだ知られていないようです.多くが英語で書かれているので日本人でも読めないことはありません.

0 件のコメント:

コメントを投稿